• 天女にあやされる
    道ばたの小石ひとつにも存在する意味がある、とは認識しながらも、えんえんと続く蒸し暑さに嫌気がさして、わたしはこんなんでいいのだろうか、とか、つまんない存在だなあ、とか、ぐちぐち思いしおれてベッドにはいった。すると、目を閉じたとたんに、天女があらわれた。といっても、薄闇のなかにぼうっとした線が浮きあがってきて、それが頭のてっぺんに大きな団子を3つのせた超古風な髪型の、ほかに色もないアニメのような顔に...
  • ヘキサグラムと魔女叔母さん
    馬の手入れで黒目が傷つき、目尻にできた引き損ないのアイラインのような傷は、1週間たってようやく目立たなくなってきた。ケガの翌日、いろんなひとに会ったのだけれど、だれにも、ひとことも、言及されなかった。はて、顔の美醜にかかわることは、「わあ、片方だけ、ひどい垂れ目のアイライン引いちゃってえ」とか思っても、だまっているのがエチケットなのか。それとも、ひとの顔って、ほかのひとと区別さえつけば、あんがいど...
  • ヨガ教室:中心軸
    ヨガ教室にあつまった受講生は、わたしをいれて女性ばかりの5人だった。3人は70代から80代、ひとりはわたしとおなじ歳くらいに見えた。彼女はこのあいだまでボクササイズをやっていて、うちへ帰るとぐったりしてしまうので、こんどはヨガでダイエットしたいとのこと。たぶん、わたしとおなじ歳に見えるのだから、わたしより歳下なのだろう。わたしはわたしの歳を5歳から10歳くらい下だとかんちがいしている。かんちがいを...
  • はみだした足
    暑くて長かった夏のおわりは雨つづきで、疲れがあふれて目の前に幕がはったようだ。目の前も、頭も、幕に包まれてどんよりと昏い。動きだす気にならない。寝不足のせいだろう。じっさい身体が内側から冷えていて、夜中に何度もトイレにいく。夏のあいだ行方不明になっていて、ようやくどこからか帰ってきた、まだ茫然自失、そんなふうな気もする。疲れをいやそうとして、昼、ベッドに横になり布団にもぐった。エアコンをかけている...
  • 「気」的生活:ペルー旅行感想
    地球じゃないところへ行ってきた。よく生きて帰ってきた。それがペルーから帰って思ったことだった。いちばん記憶にやきついたのは、マチュピチュでもナスカでもなく、高山病に苦しみながら見たシルスタニ遺跡であり、思いがけず乗ることになった軍用機だった。苦しさや怖さは記憶を強化する触媒なのだろうか。日常の生活では、苦しみや恐怖をともなう経験は、忘れようとする意識がつよくはたらく。思いだしたくないから記憶に蓋を...

プロフィール

風のミランダ

興味の対象は演劇、映画、文学です。趣味は彫刻、写仏、乗馬など。何十年も生きてきて、話題盛りだくさん、といきたいところですが、あんがい狭い?