FC2ブログ

『女の一生』文学座公演 感想

『女の一生』文学座公演
1月24日 名演夜例会

fullsizeoutput_96c_convert_20180125141336.jpeg 

作:森本薫
補訂・演出:戌井市郎による
演出補:鵜山仁
(キャスト)
布引けい:山本郁子

(あらすじ)
明治38年、清国との貿易で財を成した堤家で、母親の誕生パーティーが開かれていた。その楽しげな歌に惹かれて、身寄りのない少女、布引けいが迷い込んできた。けいはその家の母親に見込まれてお手伝いとなり、やがては長男との結婚を乞われて家の事業を任される。けいは次男への思いを断ち切り、家業にせいを出すのだったが・・・。
明治から第2次大戦にかけて、激動の時代を生きたけいと、けいを取り巻く堤家の人々の物語。

(感想)
名演で観るのは4回目になると思う。初めは杉村春子主演で、その後毎回主演女優が違った。
今回は鵜山仁演出、上演時間も縮小されて、今までとは違う新しい『女の一生』になった、ということだった。
演出が変わることで、作品が違ったものになることは経験している。が、『女の一生』に対して苦手意識が強い。本当に新しい作品になったのか、半信半疑だった。

舞台では、暗転するごとに当時の状況の箇条書きが映された。緊迫したアジア情勢を目にすると、けいと堤家の置かれた状況が見えてくる。
実業家気質のけい、気弱で理想家肌の夫。冒険家気質の次男。けいを見守る叔父。全体のストーリーが相当にカットされたと想像されるが、そのシンプルさがわかりやすい効果をあげ、逆にけいを取り巻く男たちの、それぞれの思いが丁寧に描かれていたように思う。

観ているうちに去年観た鵜山仁演出の『エレクトラ』をふと思ったりもした。以前観た『女の一生』を覚えていないから、想像でしかないのだが、今回は俯瞰的な視点が取り込まれたのではないだろうか。
けいというアクの強い人物のアップから引いて、周りの人物がバランスよく配されていたように思う。

1幕目の終わりに、有名なけいのセリフがある。本当は次男のほうを好きだったのだろう、なぜそうしたのだ、なぜあのとき自分の感情を殺したのだと言われ、けいは言う。「誰が選んでくれたのでもない。自分で選んで歩き出した道ですもの」
実際は、けいは堤家の母親の命令によって長男と結婚する羽目になったのだ。自分で選んだ道ではない。それゆえ、そのようにけいは自分に言い聞かせ、自分を騙すしかなかった。

余談だが、近年の脳科学では、人間の無意識こそが「わたし」であり、意識は自分を騙す働きしかしないとのことだ。けいの言った「自分で選び歩き出した道」とはなんだろう。そのように自分を騙すしかないけいの哀れな姿が浮かぶ。おそらく、「自分で選び歩き出した道」というセリフは、勝手に積極の意味をまとって独り歩きしてしまったのだろう。

「自分で選んだ道を行く」ことが、そんなに褒めたたえられることなのだろうか。
人は、どうしようもなく自分の思いを断念させられ、はじめの意図とは違ったほうへと歩かされることがある。むしろ、その状況のほうが多いかもしれないのだ。

けいが良かれと思ってやったことがすべて裏目にでる、周りから人が離れて行く、その状況をもまた、「自分で選んだ道だもの」と、けいは自分を騙し、自分を虐めるつもりだろうか。
いや、そう思わなくていいのだと、たぶん、けいの周りの男性たちが思う。けいを最後にはあたたかく受け容れる。
人はその人固有の生きかたでしか生きられない。そこに間違っていたも何もない。そのことをそれぞれが知り、理解するところが感動的だ。愛の眼差しが降り注いでいた舞台、といっていいような気がする。

以前の舞台では、人間のやりきれない生の感情が突きつけられていた気もするのだが、今回の舞台は透明感があった。

最後のシーン、夜の焼け跡で次男の栄二がカドリールを踊ろうとけいを誘う。カドリール、なんて素敵。けれど、そのすぐ後に、けいが明るすぎる未来を語るのは、やや無理矢理な感じがしないでもなかったけれど。










コメントの投稿

非公開コメント

プロフィール

風のミランダ

Author:風のミランダ
興味の対象は演劇、映画、文学です。趣味は彫刻、写仏、乗馬など。何十年も生きてきて、話題盛りだくさん、といきたいところですが、あんがい狭い?

カレンダー
10 | 2018/11 | 12
- - - - 1 2 3
4 5 6 7 8 9 10
11 12 13 14 15 16 17
18 19 20 21 22 23 24
25 26 27 28 29 30 -
最新記事
カテゴリ
全記事表示リンク

全ての記事を表示する

月別アーカイブ
最新コメント
検索フォーム
リンク
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QR
最新トラックバック
RSSリンクの表示
カウンター