悲観、楽観に傾かず、水平飛行でまいります。上空、笑い、いささか寒うございます。お乗りのかたは、マフラー、手袋をお忘れなく。
『やすらぎの郷』はシルバー向けのドラマということだ。とっくに高齢化社会になっていて、退職した人たちがTVにかじりついている、あるいはTVをつけっぱなしにして生活しているというのに、今頃シルバー向けドラマだなんて、遅すぎるくらいだ。

有吉佐和子原作『三婆』は、本妻、妾、小姑が、主人亡き後、同じ家に住むことになってしまった物語だ。3人同居の奇抜な着想がおもしろく、つい最近その台本を読みもしたのだが・・・、

なんといっても、現在のリアリティということでは、『やすらぎの郷』がすごいと思える。
TVに関わった人たちだけの特別な老人向け施設という設定だ。俳優やその関係者の特殊な社会であるはずの施設が、こうも一般人であるわたしの身にしみるのは、倉本聰氏のすごさだ。

俳優のあて書きと思われるゆえ、最初はそのあたりの覗き趣味的興味があった。が、ドラマが進んでくるにしたがって、興味は妙味のあじわいに変化した。

ともかく個性の描きわけがすごい。しかも奇抜なところがあって洒落ている。
たとえば、姫の「わたしね、怒ると眠くなるの」だったり、往年のプレーボーイ秀さんの猫の泣き声のようないびき、などなど。

釣りをしながら3老人が、亡くなった女房について語っている。若い女房に会いたいか、歳とった女房に会いたいかについて、大納言がいう。「おれは、歳をとった女房に会いたいよ。話すことがたくさんあるんだ」そういって涙ぐむ。

そうだよ、そうだよ。畳と恋人は新しいのがいいが、女房は古いのがいいに決まっている。

さて、このところハワイから訪ねてきた小春という元女優のエピソードが続いていた。アメリカで活躍していると思われていた小春は、じつはまったく売れず、アメリカのホテルで掃除婦をして生活していた。それを元プロデューサーの男が拾い、ハワイで一緒に暮らしていた。

元プロデューサーは、小春を利用して詐欺をはたらき、行方をくらます。嫌われものの小春はこの施設に住みたいと願いでるが叶えられない。小春は施設で騒動を起こしたことを懺悔し、施設をでていった。最後に思いがけず見送りの人があり、小春は餞別を渡される。分厚い餞別だ。20万くらいは、はいっていそうだ。小春は泣きながら受けとった。

ああ、よかった。これで小春は、生活保護を申請して、それが支給されるまで、なんとかこのお金で生きられる、と昨日思った。
そして、今日、ドラマの最後に、小春が飛び降り自殺をしたことが新聞で伝えられた。

ああ、死なせたのか、とショックだった。
小春が死んでいなければ、今日、わたしは別の内容をブログに書くところだったのだ。

小春は、生活保護の申請をしたのかしら。申請してもすぐにはもらえなかっただろうな。ハワイ在住だったし。所持金が底をついて、もうどうにもならなかったのだろう。金の切れめが命の切れめ。うーん、掃除婦をしてでも生きてきた、たくましい小春を、死なせたのか、うーん。厳しい選択だなあ。人がどうあがいても、どうにもならないことってある、そんな社会への怒りの抗議なのかもしれないな、倉本聰の。

そういえば、『北の国から』で、切羽詰まった女教師が、UFOに連れさられるエピソードがあった。どうにもならない生の、最後の拠り所としての、この世ではない世界・・・。倉本聰の優しさ。

・・・と、まあなんというか、虚構と現実とがあいまいになるほど、小春のエピソードにいれこんでしまったのだった。

冨士眞奈美の演技がリアリティがあったからだろう。驚くほどの長い台詞で過去を語るのが、ほんとうに真に迫っていた。

小春をいたわる秀さんのやさしさにもグッときた。

たまたまひと月ほど前に、台本を10本ほど読んだこともあって、すぐれた脚本とは、どういうものか、ぼんやりと考えたりもしてみた。

ふと思ったことは、いかに常識をつき崩す視点を持てるか、だった。常識にまみれた人物像など凡庸で退屈だ。倉本聰は違う。

人間洞察もユニークな人物像も、常識の膜を破らないかぎり掘り起こすことはできない。そして、今、目の前にあるものに対し、いや、そうではない、とアンチの槍をつきさすためには、作家は不幸であるか、不幸を感じる能力を持つことが必要なのかもしれない。

いや、しかし、それにしても、強行採決がなされるほどの野蛮な国にわたしたちは生きているのだな。

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葉っぱのついた顔のままで水を飲むサンタ。明日は美容室でトリミングだよ。












[2017/06/15 21:45] | TVドラマ
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